みると通信:日常生活自立支援事業と 成年後見制度との関係について~第2回~

3 日常生活自立支援事業を支える人々と支援の内容

(1)成年後見制度と異なり日常生活自立支援事業にあっては法律上に具体的な支援者のの定めはありませんが、事業を行っている全国の社会福祉協議会では、専門員と生活支援員とを置いて支援を行っています。専門員は、困りごとや悩みごとについて相談を受け、本人の希望をもとに支援計画を作成した上で契約までのサポートを行い、生活支援員は、契約内容にそって、定期的に契約者を訪問し、介護保険制度等の高齢者福祉サービスや障害者総合支援法による障害福祉サービスの利用手続きや預金の出し入れをサポートしています。

(2)ところで、所管の厚生労働省によれば、日常生活自立支援事業におけるサービスについては、福祉サービスの利用援助、苦情解決制度の利用援助、住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等を基準とするとし、その援助の内容は、預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)、定期的な訪問による生活変化の察知を基準とするとしています。これを受けた全国社会福祉協議会による案内によると、主なサービスの内容は、次のとおりです(ただし、具体的な支援内容は異なることもありますし、サービス利用については費用も必要ですので、詳細は地域の社会福祉協議会に照会してください)。

①福祉サービスを安心して利用できるような支援として、
aさまざまな福祉サービスの利用に関する情報の提供・相談
b福祉サービスの利用における申し込み・契約の代行
c入所・入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
d福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援

②毎日の暮らしに欠かせない、お金の出し入れの支援として、
a福祉サービスの利用料金の支払い代行
b病院への医療費の支払いの手続き
c年金や福祉手当の受領に必要な手続き
d税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の公共料金の支払いの手続き
e日用品購入の代金支払いの手続き
f預金の出し入れ、また預金の解約の手続きを行い

③日常生活に必要な事務手続きの支援として、
a住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談
b住民票の届け出等に関する手続き
c商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度等)の利用手続き

④年金証書、預貯金通帳、証書(保険証書、不動産権利証書、契約書など)実印、銀行印等といった大切なもの(ただし、宝石・貴金属や絵画・書画等は除く)の保管

(3)このように日常生活自立支援事業は、判断能力に多少問題がある人々の日常生活における困りごとに対して幅広く支援することができるようになっていることがお解りいただけたと思います。しかし、社会福祉協議会が行うサービスは、あくまで契約当事者である本人が意思決定したことがらを代行したり、福祉に関する諸制度利用等についてアドバイスするにすぎず、社会福祉協議会自身が意思決定を行い、その効果が本人に帰属することになる代理ではないことに注意する必要があります。下世話な表現になりますが、日常生活自立支援事業における生活支援員は、福祉サービス等についてアドバイスは行うものの、お金の支払いなどについては本人の使者にすぎないということで、契約締結等について代理権が与えらる後見人等の権限と大きく異なるところです。しかし、支援員は、単に使者としてのの役割だけを果たせばよいというわけではありません。自宅等を訪問する時には常に本人の生活状況に注意を払い、何らかの福祉サービスにつなぐ必要がないか、虐待の恐れがないか(自宅や施設を問わず)、さらには、本人の認知機能が低下していないか等についてゲートキーパーの役割を果たす必要があります。 つまり、支援員には漠然とした訪問ではなく、本人の生活向上のために問題点がないかを発見するのだという意識を持ち、気になったことは些細なことでも専門員に報告し、問題を共有することで包括支援センターや障害者基幹相談支援センター等に繋ぐことが求められているといってもよいでしょう。

 


 

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