みると通信「歳のせいによる「もの忘れ」?それとも…」
歳のせいによる「もの忘れ」?それとも認知症による「もの忘れ」?
「最近、もの忘れが多いな」と不安を覚えることはありませんか。もの忘れは年齢に相応したものですので、生活に支障がない程度であれば心配はないと言われています。ただ、認知症の初期症状の一つとしても「もの忘れ」があります。歳のせいによる「もの忘れ」は、体験の一部(食事内容など)を忘れることが多く、もの忘れの自覚がある。認知症の症状である「もの忘れ」は、体験のすべて(食事をしたことなど)を忘れることが多く、もの忘れの自覚がない。大きくはこのような違いがあるようです。パソコンのファイルを例えにとると、前者は「(ファイルへの書き込み・保存は出来ているが)ファイルの在りかが分かる時と分からない時がある」、後者は「ファイルへの書き込み・保存が出来ない」状態だと思ってください。ご家族が「あれ?」と思う時「同じことを何度も言う」「財布などの物をどこにやったかわからない」「物の名前が出てこない」「月や曜日がわからない」「電化製品の使い方がわからない」などやその他日常生活での変化があった場合は、注意する必要があります。
また、認知症と似た症状がでるため、認知症と間違われやすい病気もあります。正常圧水頭症は、歩行障害、認知症、尿失禁が主症状ですが、手術により改善が見込める場合があります。高齢者うつ病が主原因言われる仮性認知症は、うつ病の症状(意欲がない、食欲がない、眠れない、悲観的、認知力や判断力が低下するなど)が、認知症の症状と似ているため、認知症と誤解されることがあります。仮性認知症は、うつ病が原因なので、正しい診断、治療により改善が見込めます。
認知症は、早期に発見し適切な治療を受けることで進行を遅らせることが出来る病気ですので、不安感が強い方やご家族が気になる場合は、早めに専門医に診ていただくことも大切かと考えます。(認知症の初期症状についてですが、「もの忘れ」以外に「意欲、自発性の低下」「うつ症状」「言葉の障害」「注意力の低下」などの症状があります。)
認知症の方に対するご家族の接し方
例えば、ご本人が「物が無くなった」といって落ち着かなくなったらどうしますか。ご家族としては、昔のご本人のイメージが崩れることに苛立ちを感じ、怒ってしまうことが多くある様です。このようなご家族の気持ちは十分わかりますし、そう思うことは「想いのパワー」でありますので基本的には大切な感情だと個人的には思っています。ただし、ご本人にとっては、「無くなったことの不安」が周囲が思うよりも大変強い状態になっていると予測されます。そのことに配慮し、「一緒に探す」という行動をとるとご本人の安心に繋がっていくようです。食事をした後に「ご飯を食べていない」と訴えた時は、「今準備をしてるから」と声をかけ、食事とは別のことに気を向けるなどの対応をとることが必要です。ご本人にとって不安な環境をつくらないことがポイントの1つです。
また、認知症が進行するとご家族の負担は相当なものになってきますので、適切な医療と福祉サービスを利用していくことが大切です。ご家族が負担を背負ったままで生活していくと先ほどの「想いのパワー」が違う点に作用してしまうことがあります。それが高齢者虐待です。ご本人の症状→ご家族のストレス→虐待→身体的・心理的負担→症状悪化 という負のスパイラルに突入してしまうこともあります。
まずは医療機関や相談窓口を選ぶ
やはり適切なアドバイスが受けられる医療機関や相談窓口を見つけ出すことが重要です。北九州市内には、四十数か所の医療機関が「ものわすれ外来」を実施しています。少しでも気になることがあれば、まずは電話で相談してみましょう。(受診時に、かかりつけ医の紹介状が必要か確認してみてください。)また、「地域包括支援センター」という総合相談窓口では、認知症や介護についてなど医療・福祉に関する幅広い相談に応じています。その他にも「ささえあい相談会」「認知症疾患医療センター」など地域の相談窓口が設置されています。(それぞれ北九州市のHPを参考にしてみてください。)
また、最近では全国的に認知症カフェも広がりを見せています。認知症カフェは、認知症の方とその家族、地域住民、専門職など誰もが参加できる場所です。気になることがある時は、気軽に参加してみてもいいかもしれません。(北九州市 認知症支援・介護予防センター カフェ・オレンジ)
「たくさん社会資源があるのは良いけどどこへ受診・相談に行く?」という疑問をお持ちの方へ。これは私の個人的な意見ですが、「社会福祉士」や「精神保健福祉士」の資格をもったソーシャルワーカーがいる機関を選ぶというのをお薦めします。ソーシャルワーカーとは、その人らしい生活をめざして、生活の中で困った課題を軽減・解決出来るよう一緒に考えていく職種です。情報として「ものわすれ外来」でいえば、「精神科」を標榜している医療機関には、比較的「精神保健福祉士」が配置されています。また、地域包括支援センターには、常駐で「社会福祉士」が存在します。まずは、相談内容を含め、電話で確認してみてください。(少し偏った意見ですが、私自身がソーシャルワーカーなもので…。参考までに。)