みると通信:事例 4
90才代男性の財産管理を巡り親族間に争いがあり、後見申立に至った事例
D さん
類 型 : 後見 申立人 : 息子
年 齢 : 90才代 性 別 : 男性
疾 病 : 認知症
申立の経緯
申立は息子が行っている。本人は脳梗塞の後遺症により病院に入院していた。申立人の呼びかけにも反応がなく、回復の見込みはなかった。診断書は後見相当。
申立人は本人と前妻の間の子供になり、申立人以外にももう一人娘がいる。本人には後妻がおり、入院費の支払い等は後妻が行っていた。しかし、その後妻にも認知症があり、今後も財産管理を継続できるのか不安に思った申立人が今回の手続きを行っている。後妻と本人の間には子供はない。そのため、後妻は自身の生活のために家政婦を雇ったり、後妻の姪夫婦に頼るなどしている。申立人は、判断能力の低下がみられる後妻が、その家政婦や姪に言われるがまま本人名義の財産を渡すなどしてないか心配に思っている。
また、本人名義の通帳などが後妻名義に変更されており、申立人は、後妻が本人の判断能力の低下をよいことに勝手に行った行為ならば、本人名義に戻してほしいとの意向である。
後見人就任後
●財産管理面
財産目録に記載されていた預貯金については、後妻より確認できた。申立人が作成した財産目録には十数件の通帳があると記載されていたが、確認の結果、本人名義の通帳はそのうち1冊のみであり、他は後妻名義となっていた。
上記預貯金は、本人が20年以上前、判断能力がある時点に自らの意思で後妻に贈与していると思われた。また、本人の財産は全て後妻に相続させる旨の公正証書遺言が存在することもわかった。さらに、本人の娘の自宅建築費用を援助した際に、引き換えに娘から相続分の請求をしない旨の念書を徴収していた。
以上のことから、本人は後妻に自分の財産を残したいとの意思を有していたと思われた。
本人の年金は後見人が管理することになったが、夫には扶養義務者として後妻の生活費を負担する必要があった。
●身上監護面
本人は自宅近くの病院の介護療養病棟に入院していた。病状としては、脳梗塞による後遺症のため発語もなく寝たきり状態が続いていた。介護療養型とはいえ看護師が24時間体制で対応してくれるので、今まで落ち着いた状態を保てていた。
後見人を受任して1年後、国の制度方針転換により療養病棟を縮小することに伴い、本人の入院先も介護療養病棟を医療病棟に変更することになったので、早晩別の施設を探して転院してほしい旨の申し出があった。
本人の病状は落ち着いていたので、後見人としては転院することに疑問はあったが、翌年には介護病棟を閉鎖するとのことで転院先を探さざるをえなくなった。しかし、本人は胃ろう造設による栄養摂取を必要としており、かなり高度の介護が要求されるため入所を受け入れてくれる施設は限られた。また、申立人からは病院にいたときと同様のケアを要求され施設の選定にかなりの労力を要した。
受け入れてくれる特別養護老人ホームがようやく一箇所だけ見つかり、そこに申し込むことになったが、自宅とは遠くになるため、自宅にいる後妻に納得してもらうのに苦労した。入所するに当たっても、病院と同様のケアを主張する申立人側と介護施設なので病院と同様のケアを求められても困るという施設側との調整を図る役割をすることになった。
入所後は、体調不良にて施設と病院の間で入退院を数回繰り返した。後見人はその度に親族へ連絡に追われた。その後、本人は転院した施設で落ち着く間もなく死亡した。
本人死亡後
葬儀等は親族が対応。葬儀代の支払い含め、後見人には相談がなかったため関与していない。
財産の引継ぎに関しては、相続人全員に通知の上、申立人である息子に代表者として引き継いだ。その後、相続等に関して親族側からの問合せなどはあっていない。
ほか、閉鎖登記の申請など、通常の終了事務を行って業務を終了した。
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