みると通信:統合失調症について知ろう 【第3回 前半】
―統合失調症を患った方が利用できる保健・医療・福祉サービスって何があるの?―
いよいよ今回はシリーズ最終回です。第1回目、2回目を通じて、統合失調症についての理解を深めていただけたことと思います。最後に、病気を患ってしまった結果、生活障害(日常生活や社会生活のしづらさ)を抱えながら、生きていくことを余儀なくされた方たちの生活を支援するための、様々なサービスや社会資源をご紹介したいと思います。今回は内容が多いため2回に分けてお届けします。
なお、統合失調症の方に限らない精神障害者の方、全般を対象としたものを採り上げています。
1.相談の窓口(北九州市)
~こころの健康に不安を感じたり、身近な方の心の問題について心配なとき~
1)高齢者・障害者相談係
高齢者・障害者相談係では、精神保健福祉センターの精神科医による精神障害、高齢者の認知症、アルコール等の問題について相談を実施したり、精神保健福祉相談員(※)や保健師による随時相談、電話相談、訪問指導等を行っております。精神科の問題では本人よりもご家族などが困ったり心配している場合が多いと思います。最初は、周囲の人が相談に行くことが多いようです。
<随時相談、電話相談等>
区役所の高齢者・障害者相談係で受け付けています。区役所への訪問相談を希望される場合は、事前に高齢者・障害者相談係へご連絡してください。
<定例相談>
- 精神保健福祉相談・・・(自分が、夫が、親が)眠れない、イライラする、などの相談。
- 老人精神保健福祉相談・・・(自分が、夫が、親が)認知症の予防や治療などの相談。
- 酒害相談・・・(自分が、夫が、親が)酒をやめたいが、やめられないなどの相談。
2)専門医療機関への受診
イライラする、不安である、眠れない、ゆううつだ、など何らかの精神的な問題や悩みがある場合や酒の量が多い、食事をしない・過食しやすいなど行動の問題がある場合、知らない人に自分が笑われたり噂されていると感じつらい、頭の中でずっと不快な音楽が聞こえてきたり、誰かが話しかけてくるのがとまらない、などの問題がある場合があります。そんなときは専門医療機関を受診しカウンセリングを受けたり、服薬をすることで症状が改善されることがあります。精神科病院(精神科単価の病院)や精神科外来のある総合病院、精神科診療所(クリニック)に相談してはいかがでしょうか。北九州市と周辺の精神科医療機関の一覧表は北九州精神保健福祉センターのホームページで公開されています。
※精神保健福祉相談員とは、精神保健福祉法で定められている精神保健福祉センターや保健所などの施設(北九州市では各区)に配置される、都道府県知事または市町村長が任命した職員をいいます。精神保健福祉相談員には、精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談を受けて、精神障害者やその家族を訪問して、障害福祉サービスの利用などに関して助言や指導をする役割があります。
~地域生活を支える福祉サービスや社会復帰にむけての支援を受けたいときは~
1)高齢者・障害者相談係
高齢者・障害者相談係が障害者自立支援法に定められた障害福祉サービスや精神保健福祉手帳などの申請の窓口となります。必要に応じ各専門機関や事業所と各種サービスの利用調整をしています。また、回復途上にある精神障害者の方々の社会復帰を援助するために、スポーツやレクリエーション、創作活動など集団訓練を定期的に開催しています。
2)北九州障害者地域生活支援センター
障害者の生活全般に関して、家族や本人からの相談に応じ、関係機関との連携等、各種の支援を行う民間の活動拠点です。地域での生活にかかわることであれば、北九州障害者地域生活支援センターにご相談してみてください。相談者の知りたい情報の提供を始めとして、希望によっては自宅に訪問してくれどんな援助ができるのか一緒に考えてくれます。又、必要に応じてご本人、ご家族の了承のもとで関係機関との調整も図ることができます。 障害福祉サービスの利用調整やモニタリングを実施しています。
2.医療費に関する制度(北九州市)
~自立支援医療(精神通院医療)~
精神疾患のために通院する場合、治療が長期化し経済的な負担を強いられることは少なくありません。このように精神疾患のため通院医療を受ける方の治療費を、公費で賄うことにより自己負担が軽減される制度があります。通常は3割負担であるところ、自立支援医療を利用することで1割負担に軽減されます。さらに、各世帯の所得に応じて、1ヶ月あたりの負担に上限額が設定される軽減措置もあります。この自立支援医療は、通院費のほかに、薬代、訪問看護、精神科デイケアなどにも適用されます。
「自立支援医療受給者証(精神通院医療)」の交付(有効期間は1年)を受ける必要があり、申請窓口は区役所高齢者・障害者相談係です。
~高額医療費~
統合失調症など重い病気などで精神科病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。そのため家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。被保険者、被扶養者ともに1人1か月の自己負担限度額は所得に応じて、算出されます。
事前に「限度額適用認定証」を医療機関に提示すると、窓口での支払いは限度額までとなります。「限度額適用認定証」は、住所地の区役所国保年金課で申請してください。外来や「限度額適用認定証」を提示せず窓口で支払った場合は、申請により限度額を超えた分があとから支給されます。
~重度障害者医療費の助成~
精神障害者保健福祉手帳の1級の交付を受けている人は、病院などで診察を受けた場合に保険診療による自己負担額の助成を受けることができます。ただし、精神病床への入院医療費は対象外です。
「北九州市重度障害者医療証」の交付を受けることが必要で、申請窓口は区役所子育て相談・福祉医療係です。
3.制度や事業等の福祉サービス(北九州市)
~精神障害者保健福祉手帳と利用できるサービス~
精神疾患を有している人のうち、長期に渡って日常生活または社会生活に制約のある人が対象です。精神科を受診して6ヶ月後から手続きができるようになります。障害の程度により、1級(重度)2級(中度)3級(軽度)に区分され、有効期間は2年です。手帳の交付を受けることにより、下記に記載されたサービスなどを受けることができます。ただし、身体障害者手帳や療育手帳と違い、西鉄バスやJRなどの運賃の割引が受けられません。なお手続きは、区役所高齢者・障害者相談係にて行います。
- 市県民税の控除や非課税
- 生活保護の障害者加算(1・2級のみ)
- 公共施設利用料の減免
- 北九州市営バスの優待乗車制度や北九州高速鉄道(モノレール)の乗車割引
- NHK放送受診料の免除
- 携帯電話割引
- タクシー運賃の一部助成(1級のみ)
~障害者自立支援法と障害福祉サービス事業の利用~
障害者の場合は、高齢者が介護保険の各種サービスが利用できるように、障害者自立支援法に定められた障害福祉サービス事業の利用ができます。サービスを利用するためには、区役所高齢者・障害者相談係に相談し、障害程度区分認定を受けた上で、「障害福祉サービス受給者証」の発行を受けることが必要です。以下に精神障害者がよく利用する主な障害福祉サービスについてあげています。
- ホームヘルプサービス・・・地域で単身生活を送る場合など、日常生活に不安がある在宅の精神障害者などに対して、自宅などにヘルパーを派遣し、生活の援助をするサービスです。
- グループホーム・・・地域で共同生活を営むのに支障のない障害者 につき夜間や休日に共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受ける居住サービスです。
- 就労移行支援・・・就労していたが体力や職場の適性やなどの理由で離職した後、再度、訓練を受けて適性に合った職場で働きたい方などが利用する通所サービスです。
- 就労継続支援・・・病院等を退院して就労を希望するが、一般就労するには必要な体力や職業能力が不足している方が利用する通所サービスです。利用する方の実働に応じて作業工賃などが支払われます。