みると通信:アルコール依存症について知ろう【第3回】

【第3回】「アルコール依存症」によって生じる問題

お酒は適量を飲むのであれば、緊張をほぐし、気分を爽快にさせてくれ、疲労感の解消させてくれます。「飲みニケーション」という造語があるように、酒宴で人間関係を滑らかにするという素晴らしい効用があります。
しかし、長期にわたり多量の飲酒を続けるとアルコール依存症による精神症状だけでなく心身に様々な問題が出てきます。

肝臓障害、糖尿病や通風といった身体疾患が代表的で、当初は内科を受診し、アルコール依存症が疑われ精神科の受診につながった例も少なくありません。
また、長期かつ多量の飲酒は脳の委縮を引きおこし、認知障害や記憶障害といった脳障害(アルコール性の認知症)をひきおこす事があります。

さらに家族関係の問題が起こります。
問題飲酒が続いていて心身の健康状態は悪化していきますが、心配にならない家族はいないと思います。
大切な家族が、体を壊してでもお酒を飲み続けるのを見るのはつらいものです。
また酒を飲んだ本人に殴られる、壊される、暴言を吐かれる経験をする事もあります。
飲んでいない時の本来の性格は優しいおとなしい人であっても、アルコールという薬物のせいで人格が変わるからです。

「本人のためだから…」と飲みすぎを注意すると、何倍にもなって怒鳴り返される。

(本人からすれば、飲みすぎであることは自分でもわかっているが、飲みたい欲求をコントロールできない)。

怒りがこみあげてきて更に言い返すと、物をなげつけられ、暴力を振るわれた。

(本人からすれば酩酊していると自制する余裕をなくしている)。

また、依存症が進行すると、お酒を中心に生活が組み立てられるため、深酒になったり、日中からお酒を飲んだりするようになります。
遅刻や欠勤が増えて、仕事中にもお酒を飲んだりするうちに、失業する事もあります。
お酒を飲むために借金を重ねることもあります。

結果として、妻(夫)とは離婚され、子どもたちも引き取られた・・・アルコールという薬物に起因して、家族関係が崩壊する場合もあります。

アルコール依存症という病気は、進行性の病であり、ほっておくと身体や精神を病むだけでなく、家族や仕事を失うという社会的な不利益を被る病気です。