みると通信:アルコール依存症について知ろう【第4回】

【第4回】アルコール依存症からの回復のために

第4回目は、アルコール依存症から回復するために必要なことについて触れていきたいと思います。
アルコール依存症からの回復のためには断酒をすることが不可欠です。
依存症になった脳はアルコールによってもたらされた快感を終生忘れません。
たとえば、一度自転車に乗れるようになると、数年間自転車に乗っていなくても、またすぐに乗れるようになります。
「体が覚えている」とよくいいますが、一度、覚えた運動能力や知覚体験(特に快感をもたらす体験)を忘れないのは、脳の学習能力だと考えられています。
長い間断酒していても、一口飲んだだけであっという間に元のように飲酒行動をコントロールできなくなるのは、そういった脳の働き(脳内の報酬系が形成された病態)からだと考えられています。

断酒し続けるためには何が必要なのでしょうか。
まずは、アルコール依存であることを自覚する必要があります。
アルコール依存は「否認」の病気と言われています。
なぜ否認するのでしょうか。
もし、自分にお酒の問題がある事や自分や家族が困っている事を認めたら、飲むのをやめなければいけません。
お酒なしの生活のイメージがつかないのと、お酒を飲んでやった行動に直視するのが怖いという事があります。

否認から抜け出すためは、周囲の人の対応が大切になります。
「敵意」や「おそれ」「恨み」を持った相手の言葉は、だれも聞き入れません。
「意志が弱いせいだ」「家族のことを何も考えていない」と責めることは、本人を追いつめて、結果的に更に飲酒に駆り立ててしまいます。
回復を信じて、一緒に新しい生き方を始めたいと願う事が、本人には大きな希望になります。周囲の人にとって大切なことは、本人を変えようとするのではなく、自分と本人とのかかわり方を変えることです。

アルコールが体から抜けるときの離脱症状がつらいことも否認の一因です。離脱症状については、点滴での栄養補給、精神安定剤の投与などで症状を和らげることもできます。
回復するためには、アルコール専門の精神科での治療がかかせません。
まずは、家族など周囲の方が地域の精神保健福祉センターや保健所に相談行くとよいでしょう。

治療が進み、断酒を続けるには、何よりも仲間の存在が大切だと言われています。
「断酒会」や「AA」という自助グループは全国各地で例会・ミーティングを開いています。
自分体験を仲間に語り、仲間の体験に耳をかたむけることで自己洞察を深めていきます。依存症からの回復、断酒を継続するには、同じ体験をした仲間との支えあいから、新しい生き方を始めることが大切です。

またアルコール依存症は、精神保健福祉法第5条で「精神障害者」と規定されています。本人の状態によっては各種福祉サービスや自立支援医療制度(精神通院医療)の対象となる場合があります。
やはり、地域の精神保健福祉センターや保健所に相談に行くとよいでしょう。

【参考】
Alcoholics Anonymous(アルコホーリクス・アノニマス)のホームページ
http://www.aajapan.org/

全日本断酒連盟のホームページ
http://www.dansyu-renmei.or.jp/