みると通信:被後見人等の欠格事項について知ろう

選挙権について

判断能力が不十分な場合は、そのことによって不利益を被ってしまうおそれがあり、そうならないように支援・保護するための制度が成年後見制度です。しかし、成年後見制度の適用を受けた人は、それまで行使していた権利を制限されることがあります。成年後見制度の利用を考えた場合は、そのメリットやデメリットを知っておく必要があります。

そこで、今回は成年後見制度を利用した人が制限を受ける「欠格事由」について触れたいと思います。法律などで、「欠格」とは要求されている資格を欠くことをいい、欠格となる事柄を、「欠格事項」といいます。

これまで注目されていた欠格事項は「選挙権・被選挙権の喪失」でした。公職選挙法第11条1項1号で「成年被後見人は選挙権・被選挙権を有しない。」と規定されていました。
しかし、2013年3月に東京地裁で、成年後見人が付くと選挙権を失うとした公職選挙法の規定は違憲であるとの判決が出たことをきっかけに、公職選挙法は改正されました。成年被後見人であっても、選挙権、被選挙権は制限されず、憲法改正の際に行われる国民投票権も認められました。
裁判では、50歳のダウン症の女性が、20歳から約25年にわたりずっと選挙権を行使し、働きながら生活してきたのに、数年前に後見開始の審判を受けてから選挙権を失ってしまった事案において公職選挙法の規定は憲法に違反しているから、その女性には選挙権があることを確認すべきと主張されました。成年被後見人であっても、判断能力の程度によっては投票行為が可能であるのに、一律に選挙権を奪ってしまうことは、不当な権利の制限になっていないかが問われたのです。
判決では、選挙権について「様々な境遇にある国民がどんな施策がされたら幸せかなどの意見を、選挙で国政に届けることが民主主義の根幹」と表現して、選挙権が制限できるのは「やむを得ない事由がある極めて例外的な場合に限られる」と国民の選挙権の制限について厳しく判断する姿勢を示しました。そして、成年後見制度の利用基準は、「自己の財産を管理・処分する能力の有無」であって、選挙権を行使する能力の有無を判断するものではないとし、成年被後見人が全員選挙権を行使する能力がないわけではないことは明らかと指摘しました。その上で、選挙権を奪う「やむを得ない事情」はないため、公職選挙法は憲法に違反していると判断しました。
公職選挙法が改正されれば、選挙権を失うことを心配して、成年後見制度の利用を踏みとどまっていたケースでも、利用が検討されることでしょう。
今後は、後見人が成年被後見人の選挙権行使にも配慮した身上監護を行う必要性がでてくるかもしれません。また、成年被後見人が特定の候補者への投票を誘導されるような不正投票がなされないよう、注視していく必要もあるでしょう。
その他の欠格事項については、次の機会に紹介します。