みると通信:不動産にまつわる後見人の仕事~第3回 「不動産管理はタイヘン!」

第3回 不動産管理はタイヘン!

 

後見人になると、本人の財産全般に対して管理する責任や義務、権限が生じます。
不動産の管理については、その所有する不動産の種類や状態によって、行うべきことが多岐にわたることがあります。
では、A子さんのお母さんが不動産を所有していたら、後見人としてどのような仕事が必要になるのか考えてみましょう。

本人が住んでいた家(空き家)

現在全国的に「空き家」が問題化していますが、後見人も空き家の管理には注意しなければなりません。何せ誰も居住していませんので防犯や防災に気を配ることが必要です。貴重品や火の気のある物は取り除き、時折家を見回るのが望ましいでしょう。空き家ではありますが火災保険も掛けておくべきです。
草木の茂っている家の場合には近所の迷惑にならないよう定期的に剪定を行うことも後見人の仕事となります。ただし、実際に後見人が草を刈らねばならない訳ではなく、業者に依頼し、本人の財産より費用を支出することで「管理」を行うのです。
また、空き家に倒壊の危険があったり、本人の財産が少なく現金を確保する必要があるときなどは、家の解体や売却を検討します。その場合、①のケースで述べたように、「居住用不動産の処分」に当たることになりますので、家庭裁判所の許可が必要であることは既に御存知ですね。

賃貸不動産

本人が不動産を多数所有している場合、投資の目的で不動産を購入しているケースがよくみられます。マンションを購入して人に貸したり、土地を駐車場として利用し賃料収入を得ているのがその例です。
この場合、管理会社に委託するなど、きちんと管理が行われていればよいですが、中には賃貸借契約の内容が不明であったり、賃料を滞納しているケースがありますので十分に調査して現状を把握し、問題がある場合には専門家に介入してもらうなど解決に努めなければなりません。
また、不動産の中には、収益が上がらないまま長期間放置している物件もみられ、そのような場合には、そのまま管理を継続するのか、或いは売却を検討するのか、ご本人の資産状況等を考えながら判断していくこととなるでしょう。

北九州成年後見センター「みると」の実例

当センターでは実際に後見人として不動産の管理に携わった経験が多数あります。その中より、特に「この案件は苦労したなぁ」といった例をいくつかご紹介しましょう。

滞納賃料請求事件!

本人所有の一戸建ての不動産。当センターが調べたところ、この建物は賃貸しているが管理会社に委託はしておらず、家賃が10か月分程滞納されていた。そこで、借主に賃料を請求したが資力がなく支払を受けられなかったので、連帯保証人に請求(訴訟)をしたところ、和解が成立し分割にて支払を受けることができた。
なお、借主との賃貸借契約は解除し立ち退いてもらった。

“ゴミ屋敷”事件!

本人の自宅に対し、倒壊の危険がある建物として行政より指導が行われていたが、本人が応じずに放置しており、さらに家屋内や敷地に大量のゴミを持ち込み近隣から苦情がでていた。当センターが後見人に就任したのち、建物解体とゴミ処理に着手し無事に完了。

“悪条件の家”事件!

本人所有の一戸建ての不動産が空き家の状態。家の老朽化が進んでおり、賃貸するには改装が必要。また、隣人の所有する道路を通らないと、この建物にたどりつかない。さらに、建物の前面道路が狭いために、いったん建物を壊すと、現行の法律では再建築が不可能。このような悪条件のため賃貸も売却もできず、空き家のまま管理を継続した。

ここでは、実際の事例のほんの一部分しかご紹介できないのが残念ですが、ここに書ききれないほどの苦労がたくさんありました!
また、当センターでは他にもさまざまな事例がありますので、不動産の管理に苦心している後見人のかたは少なからずいらっしゃるのではないでしょうか!?