『遺言書』について知ろう【第1回】

『終活』という言葉が生まれ、エンディングノートなどを活用して、自分の最期の時をどのように迎えるのか、
また、死後の葬儀やお墓のことなどについて、生前に自分の意向を決めておく、そのような準備をされるかたが近年増えているように思います。

その一環として、自分の預金や不動産などの財産に関して、誰に何を受け継いでもらうのかを自分の意思で決めて「遺言書」を遺しておく、という方法も終活の有効な手段の一つです。

“私には遺言を遺すほどの財産はないから必要ない”と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。
しかし、遺言書を遺していない場合には、法定相続人の間で遺産をどのように分けるのか協議を行う必要がありますので、財産の多寡にかかわらず、遺産をめぐる相続人間での揉め事を避けるためにも、遺言書を遺しておくことを検討されてみてはいかがでしょうか。

 

1 遺言の種類

遺言書を作成するには、その形式や利用できる場面などによりいくつかの種類があります。

まず、一般的な方法としては(法的には普通方式遺言といいます)、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

そして、特殊な方法としては(法的には特別方式遺言といいます)、一般危急時遺言、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言があります。

後段の特別な方式の遺言はとても特別なケースですので、今回は割愛し、前段の普通方式の遺言をご紹介していきます。

①  自筆証書遺言

この遺言は、その名のとおり、遺言の全文を自分で書く(自筆する)ものです。そして、書いた遺言書を自宅などで保管しておきます。

令和2年7月10日より、この自筆した遺言書を法務局で預かってくれる制度ができましたので、これはまた後で詳しくご紹介します。

自筆証書遺言の場合は、遺言の内容を自分で考え、形式を守って作成する必要があります。具体的には、全文・日付・氏名を書き、押印をします(ただし、財産目録はパソコンで作成可能)。

いつでも、どこでも手軽に作成することができ、作成時に費用がまったくかかりません。

しかし、遺言の形式が整っていなかったり、書いた遺言の内容が不正確であったりすると、相続人の間で揉め事が起きたり、内容の不備により遺言が無効となるなど、トラブルが生じる可能性があります。

そして、いざ遺言者(本人)が亡くなったときには、裁判所の『検認』という手続きを経なければ、不動産の登記手続きや金融機関での相続手続きなど、遺言の内容を執行することができません。

そこで、自筆証書遺言の不正確さや紛失の危険性、『検認』手続きの煩雑さなどを回避するには、次の公正証書遺言という方法があります。

②  公正証書遺言

公正証書遺言は、「公証役場」という法務省に帰属する公の機関で作成する遺言書です。公証役場には、「公証人」と言われる法律の専門家が配置されており、公証人が公正証書や法定の業務を執り行っています。

公証役場では、遺言の内容を公証人に相談し、アドバイスを受けながら内容を決めることができるので、内容の不備によって遺言が無効となる心配はなく、なおかつ公証役場でも遺言書を保管してくれるので、紛失や改ざん等の恐れがありません。

また、遺言者が亡くなったときに自筆証書遺言の場合に必要となる『検認』手続きは、公正証書遺言の場合には必要ありません。