「意思決定支援」について~後見事務のガイドラインより~【第3回】
4 意思決定支援及び代行決定のプロセスの原則
(1) 意思決定支援の基本原則
第1原則 意思決定能力の存在推定
全ての人は意思決定能力があることが推定される。
第2原則 本人による意思決定のための実行可能なあらゆる支援の必要性
本人が自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を尽くさなければ、代行決定に移ってはならない。
第3原則 不合理にみえる決定≠意思決定能力がない
一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで本人に意思決定能力がないと判断してはならない。
(2) 代行決定への移行場面・代行決定の基本原則
第4原則 本人の推定意思に基づく代行決定
意思決定支援が尽くされても、どうしても本人の意思決定や意思確認が困難な場合には、代行決定に移行するが、その場合であっても、後見人等は、まずは、明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思 (推定意思) に基づき行動することを基本とする。
第5原則 本人にとって最善の利益に基づく代行決定
① 本人の意思推定すら困難な場合、又は ② 本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合には、後見人等は本人の信条価値観選好を最大限尊重した、本人にとっての最善の利益に基づく方針を採らなければならない。
第6原則 代行決定の限定行使
本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、法的保護の観点からこれ以上意思決定を先延ばしにできず、かつ、他に採ることのできる手段がない場合に限り、必要最小限度の範囲で行われなければならない。
第7原則 第1原則へ戻る
一度代行決定が行われた場合であっても、次の意思決定の場面では、第1原則に戻り、意思決定能力の推定から始めなければならない。
5 後見人等として意思決定支援を行なう局面
後見人等による意思決定支援は、飽くまで後見事務の一環として行われるものである以上、後見人等が直接関与して意思決定支援を行うことが求められる場面は、原則として、本人にとって重大な影響を与えるような法律行為及びそれに付随した事実行為の場面に限られます。
本人の特性を踏まえ、ケース・バイ・ケースで判断する必要があるが、一般的な例としては、
①施設への入所契約など本人の居所に関する重要な決定を行う場合
②自宅の売却、 高額な資産の売却等、法的に重要な決定をする場合
③特定の親族に対する贈与・経済的援助を行う場合
など、直接的には本人のためとは言い難い支出をする場合などが挙げられます。
※「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」より一部抜粋
6 意思決定支援等に係る各種(5つ)のガイドライン
A 障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン
B 認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf
C 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf
D 身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(※身寄りがない場合の医療機関等の対応等に係る部分を除く
https://www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf
E 意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202622_00026.html
7 障害のある人の意思決定支援の取り組み
北九州市での活動については、下記ホームページをご参照ください。
事業主体 : 北九州市(「障害者の巣立ちを促す地域生活支援プロジェクトチーム」(※)に委託)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/ho-huku/321_00044.html(北九州市HP)
■参考資料
意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン