相続法の気になる改正ポイント(第三回)
今回は、
「遺言制度に関する見直し」
「相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」について、
変更されたポイントをみていきたいと思います。
5 たくさん遺産がある場合の自筆証書遺言の作成が少し楽になりました!
これまで自筆証書遺言は、全文を遺言者が自筆で書く必要がありました。
例えば、不動産や預貯金口座がたくさんある場合、財産目録を作成するにも、登記事項(所在地・地目・地番・地積など)を書いて不動産を特定したり、金融機関名や口座番号を書いて口座を特定したりしていましたが、これらを手書きで書かなければならないためかなりの労力が必要でした。
しかし、改正後は、財産目録を別紙として添付する場合に限り、自筆を不要とすることになりましたので、パソコンで目録を作成したり、登記事項証明書や預貯金通帳のコピーを添付したりする方法が可能になりました。
その場合、別紙の全てのページに署名・押印する必要がありますのでご注意ください。
6 亡くなった方の嫁(息子の妻)が療養看護をしたらいくらかもらえる⁈
改正前は、遺贈などがない限り、相続人以外の人が遺産をもらえる規定はありませんでした。
改正前からある「寄与分」の制度は、対象が相続人に限られています。
改正後は、相続人でない親族が無償で療養看護などの労務提供をして被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をした場合、相続の開始後、相続人に対して金銭(特別寄与料といいます)を請求できることとなりました。
つまり、相続人以外でも、療養看護などを無償で行って、亡くなった方の財産を減らさなかったことが、普通の親族として行うレベルを超えている場合は、特別に相続人に対してお金を請求できるというものです。
親族の範囲は民法に定められており、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。
例えば、被相続人(亡くなった方)の子の配偶者や、被相続人の配偶者の連れ子(被相続人と養子縁組なし)は相続人ではありませんが1親等の姻族ですので、「特別寄与料」がもらえる可能性があります。
このほかにも改正された点がありますし、ご説明した内容についても例外、詳しい要件、経過措置などがありますので、ご検討されている事案に必ずしも適用されるとは限りません。
個別の事案については専門家にご相談ください。
[i] 一部は2019年1月13日、2020年4月1日