医療保護入院について
第1回 医療保護入院とは
精神保健と精神障害者福祉について規定した「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下精神保健福祉法)」の中で定められている入院形態の一つです。これは、精神疾患の病状の悪化の為、入院の必要性が明白であると医師が判断したにも関わらず本人から何らかの理由で同意が得られない場合に、家族等から入院の同意を得て行うものです。今回はこの入院形態について、3回に分けて説明させて頂きます。
1. 対象
入院を必要とする精神障害者で、本人が周りの人や自分自身を物理的に傷つける恐れはないが、本人の同意のある入院(任意入院)を行えない方が対象です。精神障害がある場合は、入院治療の必要性があったとしても、精神症状の影響により、入院治療の必要性について、本人の理解や同意が得られないこともあります。
2. 判断基準(日本精神科救急学会ガイドライン)
- 精神保健福祉法が規定する精神障害と診断される。
- 上記の精神障害のために判断能力が著しく低下した病態にある
(精神病状態,重症の躁状態またはうつ状態,せん妄状態など)。 - この病態のために,社会生活上,自他に不利益となる事態が生じている。
- 医学的介入なしには,この事態が遷延ないし悪化する可能性が高い。
- 医学的介入によって,この事態の改善が期待される。
- 入院治療以外に医学的な介入の手段がない。
- 入院治療についてインフォームドコンセントが成立しない。
3.要件等
精神保健指定医(又は特定医師)※1の診察及び家族等のうちいずれかの者の同意が必要となります。家族の範囲とは、配偶者や親権のある者、扶養義務者です。その他には、後見人や保佐人(判断能力の十分でない人の法的行為を支援する人)も「同意をすることのできる家族等」に含まれます。また、家族等がいない場合やその家族等の全員が意思表示すること出来ない場合は、本人が居住する市町村長も同意者となります。
※1:精神科医療において高い資質や経験をもつ場合にのみ与えられる免許をもつ医師です。人権上適切な配慮をする必要があるこのような入院形態の場合には、特別な資格をもつ精神保健指定医が判断を行う決まりになっています。医師の免許は定期的に更新しており、精神保健指定医は、精神科医療におけるプロフェッショナルであるともいえます。