【第3回】「アルコール依存症」によって生じる問題
今回は、アルコール依存症が進行した場合に、身体的・精神的・社会的にどのような問題が出てくるのか触れていきたいと思います。
お酒は一般的に適量の摂取であれば、死亡率を下げたり、気分転換やストレス解消になったり、コミュニケーションを円滑にしたりという効果もあります。適量といっても性別や年齢、健康状態によって個人差もありますので一概には言えませんが、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、1週間に連続2日の休肝日を設けることが前提ですが、1日の平均純アルコールにして、約20gであるとされています。このくらいの量であれば程よくお酒を楽しめるというわけです。種類別に換算すると、ビールだと500ml、日本酒だと180ml、焼酎だと110ml、ウィスキーだと60mlぐらいになります。適量って意外と少ないと感じる方が多いのではないでしょうか?また、自分はお酒に強いので多少酒量が増えても問題ないと思う方もいらっしゃると思います
しかしながら、長期にわたり多量に飲酒を続ければ、誰しもアルコールに関連する問題が起こってくる可能性は否定できません。
身体的な影響としては、肝機能の低下(アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変)、食道逆流症、食道カンジタ、食道動脈瘤、マロリーワイス症候群、膵炎、癌、高脂血症、骨粗しょう症、痛風、大酒家突然死症候群、脳萎縮、ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群など死に直結する病気から生活習慣病、慢性で治癒が難しいものまで多岐に渡ります。中には、アルコールを断つことで回復する病気もありますが、取り返しがつかない病気が多いのも現状です。ただ、飲酒している時には、物忘れが激しく、認知症が疑われるような方でも、アルコールを断って暫くすると、判断能力が戻る場合もありますので、まずは、アルコールを身体から抜いて、本人の状態の変化を慎重にみていくことも大切です。
次に、精神面への影響としては、イライラしやすくなる。物事を自分の都合の良いように解釈し、他人への配慮が出来なくなる。飲酒して様々な問題があるが認めない、人格レベルが低下し、年齢相応の行動や周囲の状況に適した行動が取れなくなる。などなど、特有の考え方や病的な精神症状が現れてくることも少なくありません。病状が悪化していくと、体中に虫がはっているような幻覚により、自らの体を傷つけるような症状がみられることもあります。
社会的な影響としては、飲酒運転、飲酒が原因による仕事上のトラブルや失職、人間関係の悪化、事故、借金などが考えられます。中には飲酒をして暴力行為、窃盗などの犯罪に発展する場合もあります。また、一番身近にいる家族へ与える影響は甚大です。アルコール依存症が進行していくと、心身の健康状態は悪化していきますが、お酒を止めることができません。一番身近な家族が、何とかして止めさせようとしても、体を壊してでもお酒を飲み続け、時には、暴言や暴力をふるい、物を壊すこともあります。飲んでいない時の本来の性格は優しいおとなしい人であっても、アルコールという薬物のせいで人格が変わるからです。結果として、配偶者とは離婚となり、子どもたちも引き離された・・・アルコールという薬物に起因して、家族関係が崩壊する場合もあります。
このように、アルコール依存症という病気は、進行性の病であり、ほっておくと身体や精神を病むだけでなく、家族や仕事を失うという社会的な不利益を被る病気です。